昔から肉の過剰摂取は良くないとされてきましたが、平成の研究では赤身肉の摂取と心血管疾患発症との
関連は弱いことが分かっています。日本人の平均肉摂取量91g/日に対し、100g/日未満の肉摂取では
心血管死の増加にはつながりません。過度に肉食を控えてしまうとかえって脳血管障害のリスクが増えて
しまうので注意が必要です。また、ハムやソーセージなどの加工肉摂取が多いと心不全発症・死亡リスクを高めるので食べ過ぎないようにしましょう。
脂の多い青魚などは、EPAやDHA(※1)を多く含み、冠動脈疾患(※2)の予防に効果的です。
週に8回魚を摂取する人は週に1回だけの人と比べ冠動脈疾患のリスクが少なく、魚の摂取量が多い日本人でもより積極的に魚を食べたほうがいいでしょう。
ビタミン・ミネラル・繊維質を豊富に含み、心血管死の減少に有用と言われています。これらが一品食卓に増えると心血管死のリスク低下に結びつきます。
全粒穀物は、精白などの処理で、果皮・種皮・胚等の部位を除去していない穀物や、その製品を指します。繊維質・ビタミンB・ミネラルを多く含み、冠動脈疾患の予防、心血管死のリスクを減少させてくれます。
ナッツは不飽和脂肪酸・繊維質・ビタミン・ミネラルを豊富に含み冠動脈疾患発症リスクを減少させます。
アルコールは心臓の機能を弱め、過剰摂取はアルコール性心筋症のリスクとなります。飲酒習慣がある人では、純アルコールで30g/日未満にとどめることが推奨されています。(例:350mL×約2缶)
清涼飲料水や加糖飲料の多量摂取は肥満、糖尿病のリスクを高めると言われています。またカロリーゼロの人工甘味料を使用した清涼飲料水も糖尿病の発症に関与する可能性があり、注意が必要です。
心血管系の病気を予防するには、地中海食やDASH食(※3)等が有用です。日本食については醤油、
味噌汁、漬物など塩分が高い食品も多く、塩分の過剰摂取が日本食の好ましい効果を低くしてしまいます。そのため減塩を加味した日本食スタイルが推奨されています。
※1 EPA・DHA…青魚に多く含まれているn-3系脂肪酸。
※2 冠動脈疾患…心筋への血液供給が部分的または完全に遮断される病気。
※3 地中海食…魚、野菜、果物、ワイン、全粒穀物、オリーブ油、ナッツを多く含む食事スタイル。
DASH食…野菜、果物、低脂肪の乳製品を多く摂り、肉類、菓子類、砂糖を含むソフトドリンクを
減らす食事スタイル。
引用:心不全患者における栄養評価・管理に関するステートメント 日本心不全学会ガイドライン委員会編集
管理栄養士 小此木伽織