栄養指導の場面で患者様に時々聞かれます。「何をたべたらいいの?食べちゃいけないものってある?」
これらの質問に対して大抵は「食べてはいけないものはありませんが、なんでも食べ過ぎは良くないですよ」と答えます。具体的にはどの位が適量なのでしょうか。
今回は心血管イベント予防における各食品のエビデンスを調べてみました。
まずは、「肉」についてです。日本人の平均摂取量は103g/日*で欧米人の179.3g/日に年々迫りつつあります。日本人を対象とした研究では肉摂取が100g/日未満では心血管死の増加には繋がらないことが示されています。
注意したい1つめは、肉に含まれる脂(動物性脂肪/不飽和脂肪酸)の過剰摂取です。コレステロール上昇の要因となるため、脂肪の少ない赤身肉を選ぶのが良いでしょう。
注意したい2つめはハムやソーセージなどの加工肉です。ソーセージ5本以上(75g/日)と2本以下(25g/日)で比較すると心不全死亡リスクが約2.5倍増えるとの報告があり、原因として塩分や食品添加物などの関与が指摘されています。
「魚」についてはどうでしょうか。週8回(約180g/日)摂取する人は週1回(約23g/日)の人に比べると冠動脈疾患のリスクが37%少ないことが報告されています。日本人の平均摂取は64g/日*、伝統的な日本食では魚摂取が多い日本人ではありますが、より積極的に魚を摂ることがリスク減少につながると考えられます。
他に報告されているものとして「野菜・果物」を一品食卓に加えることで心血管死のリスク低下に結びつきますし、一掴みの「ナッツ」は冠動脈疾患発症のリスクを減少、「全粒穀物」は冠動脈疾患の予防、心血管死のリスク減少効果が報告されています。
「アルコール」の過剰摂取はアルコール性心筋症のリスクとなる一方で、軽度のアルコール摂取は心不全発症のリスクを低下させます。
純アルコールで1日30g未満にとどめるのが良いでしょう。しかし心血管予防のために飲酒習慣のない人が飲むのは勧められません。
日常的な食事はいろいろな食品の組み合わせです。そのバランスをとりながら、何よりも食事を楽しむことが大切です。
管理栄養士 森川澄子
*令和元年国民健康栄養調査
引用:心不全患者における栄養評価・管理に関するステートメント 日本心不全学会ガイドライン委員会編集